妹背山婦女庭訓の「お三輪」・新版歌祭文の「お染」・伊達娘恋緋鹿子の「お七」
この演目の中でお馴染みの、赤と水色「鹿の子染分麻の葉柄斜段違い」の鹿の子衣装を復元する。

京都美山で大変な作業で再生されている「日本茜」で赤を。藍色(水色)は、山崎和樹先生に。下絵から型堀り・絵摺り・鹿の子を絞り、帽子絞りへ進行中。

【麻の葉柄】
一見一般的な「麻の葉」柄。実は、蜂の巣のハニカム構造(六角形)が隠れている。三点以上の点を最短120°で結ぶ直線(必ず六角形になる)。蜜蜂にとっては、最小の材料と労力で自然の法則で出来る六角形の集合体。鹿の子を絞るにも、この角度を基盤にするのは、複雑な麻の葉柄ながら、一番絞りやすい間隔。植物染めにしても 伝統文様にしても、古来の人々は 自然をまず感覚で捉えている事に感心、脱帽。

茜染めを二日間に渡り行う
三回目で、ようやく以前染めた「日の丸」の朱赤に近づいた。これ以上、媒染→染色→媒染→染色を繰り返すと、中帽子絞り・鹿の子絞りに影響するため、終了。崖っぷち切羽詰まると、目も回るが突然色々と思考も回る。二年前に、フリーズドライの茜を試作用に頂いてたのを思い出す。今月掘られた生茜➕フリーズドライ茜で染める。水量を減らし濃度を凝縮して最終三回目に挑んだ。

一色目、「茜染め」が終わり、充分に乾燥。中帽子絞りを全て外し、さらに半月程日陰干し、色も馴染んだところで、茜染の部分を防染するために、再度帽子絞りを施します。梅雨時という事で、ビニールの帽子の中にカビが生えないように、一工夫。

次の工程は、解いた後、中帽子絞りで「朱赤部分」を防染して「藍の人」の元へ、東へ向かう。

文楽 人形使い吉田勘彌氏の助言・資料を頂き、「江戸時代の藍色は、現在使われている衣装の色より、もっと濃く明るかったのではないか、我々は既に色褪せた衣装を当たり前と、いつも使ってると思う。元気活発な娘達が纏う衣装であるのだから」

という言葉に、今回は出来るだけ当時のコントラストを想像重視した。「草木工房」の皆様には、大変準備からサンプル染め、藍の具合・調整など多面にご協力頂きました。

拵え(こしらえ)ー着付け

8月末、絞り生地を「茜と藍」に染め上げられ、10月末衣装が仕立て上がり、吉田勘彌氏の手によって「拵え」。茜ちゃんの衣装完成。文楽人形使い 吉田勘彌氏には、本来江戸初期の「色」について、御意見、御指導を頂いた。化学染料が無い時代の「麻の葉段違い染分絞り」の『色彩・濃度』が今回の復元テーマ。又、麻の葉柄は正方形・黄金比率(1:1,618)ではなく、大和比率(1:1,414)の連続柄。大和比率は、仏像の顔・日本建築・彫刻・生け花と日本独特の比率であり、実は手絞鹿の子の「粒」も正方形のようで、微妙に違う。ほぼ100%、大陸から渡来した文化・技術が日本の象になる時、影響を及ぼすのは、日本独特の四季折々の自然の世界。

藍と茜出展社(者)募集